校長ブログ 2025年度入学式式辞

2025年度和光中学校 入学式 式辞

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。和光のキャンパスにも街にも桜を始め、さまざまな花が咲き、みなさんの新しい生活を祝福しているかのようです。新しい生活のスタートにぴったりですね。

 保護者の皆さま、お子様の和光中学校へのご入学、心からお祝い申し上げます。小学生から中学生へと大きな節目を通過し感慨もひとしおのことと思います。これから、心身ともに大きく成長し自立に向かっていく彼らを、一歩離れて見守っていくことも大切ということを頭の片隅においていただければ幸いです。

 改めまして、新入生のみなさん。みなさんには、今日和光中学校での最初の授業として考えて欲しいことがあります。それは「ことば」についてです。「ことば」は、私たちにとってとても大切なものです。なぜなら、私たちは「ことば」を使ってしか考えることができないからです。例えば、「民主主義」ということを、ことばを使わずに説明することができるでしょうか。難しいですね。学ぶということは、自分が今持っていることばを使いながら、新しいことばの意味を獲得していくという過程でもあります。先ほどの「民主主義」ということばを、私が説明するとすれば、「一人ひとりが同じように権利を持ち、何かの決定にあたって、話し合いながら結論を出していくこと」ということになるでしょうか。

 私たちは、産まれてきた時から家族の中で身につけてきたことば、母語と言います。「母」という字と、〇〇語の語という字を組み合わせて母語、母の語ることばということですが、母親がこどもにとって最も身近な存在であることが多いことからそのように呼ばれるようになったのですね、母語によってコミュニケーションをし、母語を組み合わせて様々なことを学び考えるようになって現在に至っている訳ですが、この場にいる多くの皆さんにとってそれは日本語でしょう。中学、高校とこれから成長していく新入生の皆さんには、自分の「ことば」を豊かにすることを心掛け、学びを深めていって欲しいと願っています。

 もう一つ皆さんに伝えたいのは、「ことば」は凶器にもなり得るということです。とある青年の経験ですが、彼は千葉県の私立の中高一貫校に中学受験して入学したそうです。その学校にはスクールバスがあって、そこに「〇〇ウザイ」「〇〇消えろ」と落書きがしてあった。〇〇には彼の名前が入っているわけですね。自分が直接、悪口を言われることはなかったけれど、段々と周りから話しかけられなくなり避けられるようになる。それが辛くなって、食欲が無くなりガリガリにやせ、家では暴れるようになったのです。これは、ことばが凶器になった実例ですね。

 ところで、1年生の担任の一人の先生は「いのちを支配する言葉の代わりに、いのちを生かす言葉を皆でなんとか見つけていくこと」と、和光学園の先生たち向けの冊子で書いています。「消えろ」とか「ハブく」とかいう言葉が「いのちを支配する言葉」であることは明らかでしょう。では、「いのちを生かす言葉」とはどんなものなのか。それを探すことは和光中の皆さんへの宿題としたいと思います。

 先ほどの少年のその後の話をしておくと、カウンセラーに相談できたことにより自分の気持ちに素直に向き合うことができるようになり、しばらくの学校に行かない時期を経たあとに、再び学校に通うようになり、後には自分もカウンセラーを目指し、念願かなって現在に至っているとのことです。そして、「話す」ことは「(辛いことを)放す」こと、というフレーズのもと、カウンセラーとして子どもたちの相談に乗っているとのことです。

 先ほど「民主主義」という言葉の説明をしましたが、「一人ひとりが同じように権利を持ち、何かの決定にあたって、話し合いながら結論を出していくこと」というのは、和光が大切にしている「自治」の重要な部分です。「自治」ということは、今の皆さんには難しいと感じる人もいるかもしれませんが、これからの3年間であれこれ考えながら、実感していって欲しいと思います。

 さぁ新しい一歩を踏み出す時です。勇気を持って、仲間と「ことば」を使って語り合いながら進んでいって欲しいと思います。

2025年4月9日 和光中学校 校長 橋本 暁



 

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