3年生 秋田作文

3年生は、秋田学習旅行を振り返って、学んだことや感じたことを作文にしています。

和光祭期間中に行った「秋田を伝える会」では、代表者が作文を発表し、1,2年生に「秋田」とはどんな行事なのかを伝えました。


発表された作文のひとつをご紹介します。

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 私が秋田学習旅行の存在を知ったのは6年生の頃だっただろうか。あの頃の私は、ただ農業体験をしに行くだけだと思っていた。今は、そんな私が幼く、無知だったと思い知らされている。この学習旅行には、あの頃の私に知り得ない、大きく素敵な体験と学びがあった。

 秋田学習旅行は学年総会、もっと言えば中学校3年間の延長線上にあったと言えるだろう。

 今までとは違う学年総会を終えた私たちは、学年として大きな不安を抱えずに旅行に向かうことになった。受け止め合いをすることが前より上手くなった総会ができたことが要因だ。

 初日には、わらび座の人たちがミュージカルを通して、"違い"について教えてくれた。身分も性格も違う人々が歌によって一つになる、ということ。これはまさにお別れ感謝の会での農家の人たちと私たちのようではないか。年齢も暮らしも違う私たちは集って、『ふるさと』を一緒に歌い、気持ちを共有した。そして涙した。たったの3日間農家で過ごしただけで別れを惜しむほどになったのは、やはりとうさん、かあさんたちが温かかったからだ。とうさんは辛口で厳しいようでも、実は人にとても甘かったりする。かあさんはひょうきんで、自称ハエマスターなのだが、いつも美味しいご飯を、笑顔を届けてくれた。みっちーは怖いくらいにいつも微笑んでいて、私たちの心を和ましてくれた。そして、柴犬のハルも、牛も馬も山羊も癒しだった。そんな素敵な環境で私はいったい何を学んだのか。主に2つあると思う。

 1つ目は、"循環"という言葉についてだ。農家では、みかんの皮、さつまいものつるを牛、山羊に与えている。彼らのふんをたい肥として、田んぼや畑に使っている。牛のベッドには、米のもみがらが使われており、いずれふんと混ざることになる。人は、作物を育て、食べ、余った部分を動物に与え、排泄物を肥料にする。それを使ってまた作物を育て...。というふうに、一つの大きな循環の輪ができ上っていることに感動した。余分を利用することによって、循環の輪を形づくるにはたくさんの時間と労力が必要になる。それを行っている人がいること自体が驚きであった。"循環"は一歩間違えれば、悪循環と化す。繊細な循環の輪は、上手く機能していればまわっていく。この"循環"の考え方は、環境問題について議論することにおいても、これからの未来を築いていく上でも大切なことだ。

 2つ目は"はた・らく"についてだ。農家で作業をした3日間は、田んぼの雑草とりやもみがらの袋詰めなど、とにかく、汗を流して労働をしていた。東京で生活するときには考えられないほど、食事が待ち遠しくなった。へとへとになりながらも12時の合図を待ち望んでいたり...。人にとって、食べるとはこんなにも大切なことなのかと改めて実感した。自分は頑張ってたくさん働いていると感じていたが、それが果たして"はた・らく"になっているかは自信を持てていなかった。2日目の夕食会のときに、とうさん、かあさん、みっちーから「ありがとう。お疲れさま。」と言われて、"はた・らく"をできたと確信した。山小屋で食べたおにぎりも一日働いたあとの焼肉も本当に心からおいしかった。3日間ずっと食事のために農作業をしていたと言っても過言ではない。"はた・らく"ことによって、循環の輪に少しでも加われたことを誇りに思う。農家で作業をして、「ありがとう」と言われ、食事を出してもらうう。そして、私達は食べて「ありがとう」と返す。ここにもまた新たな循環の輪が生じていることに気がつく。

 秋田学習旅行には一貫性があると思う。学年総会で色々な人の違った意見を聞き合う、受け止め合う。わらび座のミュージカルで物語によって"違い"を教えてもらう。祭りづくりや農作業を通して、自分とは違う考えや暮らしの人々と出会う。その中で今まで見たことのない仲間の一面を発見したり、目標があれば全力投球できる自分の姿を発見したりする。それらもある種の"違い"である。さらには、今回の学習旅行で、学年通信のタイトルである『出会い・発見』についても伏線を回収できた。また、井上先生の社会の授業で「足るを知る」という言葉が出てきたが、とうさん、かあさん達の暮らしぶりを垣間見ることにより、初めて実感した。その他、透明人間を見つけるなど、中学校3年間のうちに知り得た多くの謎の言葉が、モノクロームの写真が色づくように鮮やかに脳裏に描き出されたのだ。秋田学習旅行は、中学校3年間の集大成だと思う。本当に、和光の学びは一貫性に富んでいる。クラスの団結力や自身の成長をこれからも生かしていきたいものである。

 他の学校に通っている人達の想像を絶する秋田での体験は、人生に影響を及ぼすほどの存在感のある経験になるだろう。そして、大切な思い出だ。とうさん、かあさん達、秋田で出会った温かい人達のことは、遥か遠い場所にいても、遥か長い時間を隔てても決して忘れない。


 

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