卒業式 校長式辞

桜の花のつぼみもふくらむ春の日に、126名の卒業生を送り出します。卒業生の皆さん、卒業おめでとう。そして、卒業生を今日まで見守ってきた保護者の皆さん、心身共に大きく成長したお子さんの姿を感じておられることと思います。心よりお祝い申し上げます。


さて、卒業生の皆さんの中学校生活は6月からのスタートでした。入学式も1クラスずつ、クラス写真も合成したものでした。感染症の対策のため、クラスの人たち全員ともなかなか会えない中学校生活の始まりだったと思います。そして、3年間行事の中止や延期が続いた学校生活でした。悔しい思いをした人もたくさんいたと思います。そうではあっても、昨年の9月に皆さんと出かけた秋田学習旅行で見た姿、つい先日見た卒業演劇での皆さんの姿は、3年生としての成長を十分に感じさせるものでした。

 秋田では、農家の父さん・母さんと過ごす中で人の温かさと同時に、日本の農業の抱える課題も感じたことでしょう。私の3年生との関わりは秋田が一番深かったと思っています。そこで、今日は、日本の農業に関わって、最近気になった話をしたいと思います。

 私が気になった話とは、牛乳が今、余っているので、乳牛を処分した場合、国が15万円の補助を出すというものです。農家の人たちは、大切に育ててきた牛を処分するのは、当然やりきれない気持ちだろうと思いますし、オヤッと思ったのは、何年か前にバターや生クリームが足りなくなって、ケーキの値段が上がるということがあったからです。バターは牛乳から作る訳ですから、牛乳も足りなかったはずです。どうやら、バター不足の後、牛乳の増産策が取られたのですが、余ってしまうと調整がききません。牛乳は長期間保存できないからです。

それにしても、食べ物を輸入に頼る国で、なぜこんなことになるのか。余っているなら、バターにすれば良いのでは、とすぐ思い付きますが、バター工場の牛乳受け入れ量には限りがあり、たくさん余っている時には対応しきれないのです。他にも、海外から一定量の乳製品の輸入をしていることも理由のようです。海外製品の方が値段が安い場合があり、国産品より輸入品を使いたい業者がいる。政策的に、補助金を出すなどして国内製品を使いやすくすることはできるけれど、それには税金が必要です。いろいろ一筋縄ではいかない難しい問題があるように思います。さらに言えば、エサとなる穀物は海外から輸入してくるので、円安になれば価格があがり、酪農家は今本当に困っているとのことです。

 コメづくりにしても、今の日本の農業は、石油なしには成り立ちません。コンバインやトラクターなどの機械が動かないからです。ウクライナとロシアの戦争によって、一時期原油価格は値上がりし、農家は大変な思いをしました。そう考えると、日本という国は世界が安定していなければ、やっていけない国なのに、皆さんよく知っているように、ウクライナとロシアの戦争は終わる気配がない。いったいどうすれば、戦争を終わらせられるのか。

 このように、牛乳の問題にせよ、戦争のことにせよ、世の中には簡単に答えが出ない問題がたくさんあります。答えの出る問題ばかりではない、ということを知り、答えの出ない問題を考え続けていくことが重要だと、私は思います。そういう姿勢を育てていくことが、和光の教育の重要な柱の一つです。3年生の皆さんが卒業するにあたり、そのことは改めて強調しておきたい、と思います。

 

 この3月で和光から離れる人、和光高校に進む人。どのような道を進むのであれ、これから新しい出会いが待っています。ひとの成長には、他者との関りが欠かせないですが、4月からの新しい、そして制限の少ない生活の中で、思いっきり色々な人と関わりを持って、一人ひとりが新しい自分に出会って欲しいと願っています。

どうかお元気で。

 

2023315

 和光中学校校長 橋本 暁

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