2019年度和光中学校入学式 校長式辞

 本日、和光中学校は143名の新入生を迎えました。新入生のみなさん、そして保護者の皆さん、ご入学おめでとうございます。私たち和光中学校の教職員は心から皆さんの入学を歓迎します。

皆さんのお父さんやお母さんは、今日の日をどれほど楽しみにされたことでしょう。小学生から中学生へと大きな節目を通過し感慨もひとしおのことと思います。

季節は春です。野山に花が咲き乱れています。和光の敷地の中にも桜が咲き、正門を出たところには芝桜や水仙が咲いています。ところで、春の植物と言えば、竹の子も季節を感じさせてくれるものです。私は、実は、新入生のみなさんは竹の子のようなものだと思っているのです。竹は一番成長する時には、1日で1メートル以上成長するそうです。同じように、10代の3年間、6年間というのは心身ともに大きく成長します。身長が急に伸びて身体つきが変わったり、声変わりもします。同時に、深くものごとを考えられるようになったり、知識も増えて精神的にも大きく成長します。

さて、このような変化はどのようにして起こるのでしょう。生物として時間の経過につれて自然に変化していく面もありますが、自分で意識的に何かをすることによって変化していくこともあるのではないでしょうか。例えば、部活動でたくさん身体を動かし運動することにより、筋力や体力がついていきます。自分で調べたりまとめたりすることにより、検索する力、まとめる力、表現する力がついていくのではないでしょうか。

そうだとすれば、みなさんに必要なのは失敗を恐れずに、チャレンジしてみる、何はともあれ一歩を踏み出してみることだと思います。失敗を重ねられるのは若者の特権です。一つ例をお話したいと思います。和光中学校では3年生の卒業間際に、卒業演劇というものを行います。二十年近く前、私の担任したクラスはミュージカルを自分たちのクラスの台本に選びました。私は、あっこれは上手くいかない、中三の男子が人前で歌を歌うなんて恥ずかしくてありえないじゃないか、と思ったのです。案の定、男子が演じなくてはいけないキャストはなかなか決まりませんでした。隣のクラスはもう練習に入っているのにです。そういう中で、ある男の子がクラスの仲間に誘われて役に立候補しました。彼が後に書いています。「自分の中で『歌を歌うのが恥ずかしい、嫌だ』という気持ちがあった。でも『3年の最後だから何か今までやったことのないようことをやりたい』という気持ちが勝った」彼は夏まで運動部の選手でそちらに熱中していて、どちらかと言うと行事を楽しむというタイプではなかったように記憶しています。そして、恥ずかしがり屋さんでした。しかし、ひとたび練習が始まると集中して取り組み、最後に「初めは不安だらけだった劇を成功させるためにクラス全員が本気になれた。だから最高の劇になったんだとオレは思う」と振り返っています。この時私は学ばされました。上手くいかないんじゃないか、という大人の予測をいい意味で裏切って成長するのが中学生なんだと。ですから、繰り返しになりますが、勇気を出して前に出てみることを大切にこの3年間を過ごして欲しいと心から思っています。

さて保護者の皆さん、先ほど申し上げた通り、ひとりの人間の人生の中で中学生の時期ほど、成長のスピードが激しい時期はありません。そして中学生の成長は、右肩上がりに一直線に進むものではありません。時に誤りを犯したり、つまずくこともあります。そのような時、少し離れたところから見守っていくこともまた大切です。和光では、学級親和会という場があり、みんなで子どもたちの成長を見守り、親同士悩みを共有する場があります。お忙しい毎日かと思いますが、ぜひとも親和会に足を運んでいただけますようお願い申し上げます。

新入生のみなさん、先輩である2・3年生はみなさんを和光中に迎えようと様々な準備を積み重ねてきました。クラスにも新しい仲間がいます。様々な出会いを楽しんで、安心して中学校生活をスタートさせてください。

2019年4月10日 和光中学校 校長 橋本 暁

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